[無味日々]さらば友よ

ヒロポは今はニートだが、昔は印刷会社の営業マンだった。みんなが知っている大手会社のプリンタの箱の中身一式を刷ったりしていた。非常にクレームが多くて、安くて、それでも死ぬ気でやったら売り上げが一千万弱だった。
本日は前職の同期が辞めたらしいのでお別れ会に顔を見せる。前職の会社の同期が次々に辞めている。次の職を決めて給料上がるやつもいれば、失踪したやつもいる。ヒロポは職を決めずに辞めて、三ヶ月何もしなかった。時給に換算したら670円だったし、鬱病になったったからだ。沼の中に鼻のギリギリまでいるような、三ヶ月であった。
本日は、靖国神社へ花見に行った。3月末で辞めたその男は、自分でお別れ会の花見を企画して、自分で場所取りをしていた。
靖国神社の花見会場は22時で終りだ。徒歩10分で前職の会社につく。ちょっと寄ってみた。洸々と明かりがついている。とたんに、昔のバカバカしい気分が蘇ってきた。バンドもできない、絵も描けない、ただの変なヤツだった一年間。ヨレヨレのスーツを身にまとい、金を稼ぐために、米つきバッタのように頭を下げ、米でなく嘘をつきまくった一年間。猫と祖父に会えなくなった一年間。一畳の窓もない部屋で寝起きしていた一年間。家族がバラバラになりそうなのを繋ぎ止めるために生きていた一年間であった。
あまねく総ての会社員は、「これは本当の俺ではない」と思う。俺はもっと自由なはずだ、なんだってやれる、そしていつかこんな仕事辞めてやると思う。全員がそうだと言っていい。
しかし、ヒロポには現実を見ろと言う。もうすぐ30だ。結婚はどうする?子どもは欲しくないのか?老後はどうするのだ?
ヒロポに聞く前に、きみはどうするんだい?
がんばってくれ。ヒロポはきみ達のこと好きだし、偉いとも思う。心配してくれてうれしいし。


こんな日は、ギター弾いて寝るよ。