少年、ボヤをおこす

 (僕が少年の頃の話)


 ゴミ箱に熱したシャフトを「アチチ」と落としてしまい、ゴミ箱の中のクズがジワジワと燃え出した。


 ミニ四駆のシャフトを炎で熱すると強度が増すと聞いたので、少年の頃のヒロポは割箸かなんかでシャフトを摘んで、ライターの炎で熱していたのだ。
 するとライターが次第に物凄い熱を持ち出した。そして火傷した。脊髄反射で少年はライターを手放した。ついでシャフトも落としてしまった。

 いよいよ炎は大きくなり、母が日々使っている鏡台の椅子に燃え移った。少年はあわてて水を汲んで来て椅子に垂らし消火した。ビニールで覆われた椅子は焦げ、中身のスポンジがあらわになっていた。

 少年はひとりで火を扱う事を禁止されていた。父からは「火遊びをするとおねしょをするぞ」と言われていた。そもそも火遊びをせずとも毎日おねしょをしていた。焦げた椅子を呆然と眺め、改めて火の恐ろしさを目のあたりにした。大人たちの忠告を無視し、慢心した気持ちでシャフトを暖めていた自己中心的な自分の行動を後悔した。

 少年は必死にボヤの跡を消そうと考えた。
・案1、修理する。無理。
・案2、椅子を棄てる。無理。
 様々な案が脳裏をかすめたが、全て却下した。結局焦げてビニールの剥がれた部分を鏡台の内側に隠し、タオルを乗せてその場をしのぐ事にした。

 やがて母が帰宅し、少年のボヤは直ちに発覚した。母は厳しい人だったので、少年は激しく叱られるのを覚悟した。ところが母は叱責するよりもまず、少年の身を案じた。優しい母のいたわりであった。次第に少年の夜尿癖はなくなっていった。






 今日は実家の引っ越しを手伝いました。終日、父はおらず母と過ごしました。僕は財布を忘れました。帰りに寿司を食べさせて頂きました。母は僕を「ジャンボおしどり寿司」という店に連れて行ってくれました。母はメロンを2切れ、スイカを2切れ、寿司を2皿食べました。僕が
「ここは寿司屋だよ、お母さん」
と言うと、
「くだものも食べなきゃダメよ!」
と返されました。独自の思考回路について行くのに必死でした。

 あと、
「このダンボールのCD誰の?」
と言われ、中を見てみるとポリシックスの1st、『鳥肌黙示録』、『駐車場のヨハネ町田町蔵+北沢組』、『殺害サドンデス3』、『幸福の条件/木魚』、グレイトリッチーズ、有機生命体、アイアンメイデン、Tレックスなどが入っていました。お母さん、これはあなたの息子が高校から大学にかけて聴いた様々な音楽です。この中で一番聴いたのは『麦ライス、湯』という曲。




 おしまい。