急には止まれないから突っ切る

前田くんの新しい勤め先でプリンターが使えるように手伝った。
古道具屋さん。
赤いインクしか出ないが、店の主人は「これでいいです」と言った。
酒鬼薔薇聖斗を思い出した。


この古道具屋、店員がヤバイ。
まず、ご主人、まだ50代にも見える、髭をたくわえたナイスメンなのだが、まともな会話が難しい。
ぼけているのか、言葉のキャッチボールがノーコン。捕手に回ると突然一人でサッカーを始めるような。
これまでよく生きてこれたなと前田くんと話す。
しかし、きっと、みんなから愛されてきたのだろうと思う。すごく優しいんだもん。
ヒロポにも缶コーヒーくれた。ミルクが固まっていたが(ヒロポのツボ)、よく冷えていて気に入った。
コーヒーがではない。ご主人の事が。


また、もう一人の店員が前田くんなのである。これはヤバイ。
なんせ彼は生粋のパンクス、その上格闘家なのである。当然気に入らないことがあれば物を蹴る、殴る、壊す。シャバにいる時間が人生の3分の1なのである。
しかし、花を愛し、弱きを助け強きをくじく男だ。刑務所に入っていたのは暴力沙汰ではなく、クスリなのだ。
そんな彼は、懸命にご主人のフォローをしていて、終始なごやか、癒しオーラが漂っていた。


で、さらにやばいことに、ヒロポもここで働きたいと考えている。理由は近所だから。らくそうだし。


この3人だと、この店、潰れるかもしれん。





次回、「雨にキッスの花束を」
東横線で花束を抱えるヒロポの巻。