どんどんぱっ!どんどんぱっ!(クイーンのうた)
クソ暑いとはまさにこのこと、道行く人がバタバタと倒れ、セミも鳴けずに死ぬほどの夏。
ヒロポは花束を持って電車に乗っていた。
ひまわり。
らららーららーららー
るるるるるるるー(映画「ひまわり」の曲)
気付いたら目の前に白髪の女性が両手で吊革にぶら下がり、イッちゃった目で虚空を見つめていた。
「エチゼンクラゲ…」
女性がそう呟いたのが聞こえたので、ヒロポは、お元気そうですが、もしよろしかったらお座り下さい。と席を立った。
すると女性は、
「大量発生はすぐですから。」
と、にこやかに囁いてきた。
どうやらすぐに降りるから結構です、と言いたいらしい。
しかしヒロポはすでに席を立っている。女性は猿みたく吊革にぶら下がっていてビクンビクンとイッちゃっている。
だから、ヒロポは花束の中から一番みすぼらしい花を一本選んで女性に差し出して言ったんだ。
あなたはこの花のようだ。
だから座ってください。
枯れ果てる前に。
女性は、
「これでも昔はたまちゃんよりも人気があったのよ。でも、ありがとう。(ちゅ)」
ヒロポにキッスをして座席に倒れこんだ。
降りる駅は一駅先で、一緒だった。気まずかった。
それから、ヒロポの花束を狙う刺客をジャイアンソングで倒し、目黒のパーシモンホールについたときにはオペラは既に始まっていた。
ヒロポは妹を探した。
真白いカラスが、
「お前の妹はお話の中のお姫様になって、毎日王子様と舞踏会で踊っているよ。」
カー。と鳴いた。
ヒロポも悲しくなって泣いた。
でも見つけたんだ。妹を。
この世にある全ての花束は、彼女のためにある。
彼女のオペラは本当に素晴らしかったんだ。
特に、「お母様が言った事を今から言うわ」ってとことか。
久しぶりに両親に会って、ベタベタ触られた。「ヒロ、腕毛深くなったわ〜」「ホレ、シッペシッペ」
世界のどこを探しても代わりのいないヒロポの両親は、残念ながら死ぬほどうざい。
ランチをしながら酒を飲んで、キレずにすんだ。
高円寺駅で3リットルくんから電話。
うんうん、そうかそうか。
分かった。
いいよ。
生きてりゃ。
生きてりゃ、また会えるよ。
どんどんぱっ!どんどんぱっ!(クイーンのうた、フェイドアウト)
3リットルくんの身に一体何が!?