マグリッター

目覚めてすぐに足のつけ根が酷く痛むのを感じた。
昔母親から殴られた際に勢い余って割れた花瓶が突き刺さり医者に行き摘出した跡だった。
あれほど怒鳴りわめき散らしていた母親がしんと静まり返りおろおろする様子を見て私の自障行為は始まった。
15年程続いた自障行為は薬を服用することであっさりと止めることができたのだが今度は薬の副作用で片足が麻痺してしまった。
忌々しいことに花瓶が突き刺さった逆足だった。
水を飲みたいと体を起こそうとしたが足はうんともすんとも言わずひたすら麻痺を続けた。
その時今では寝たきりになっている母親が私を呼ぶのでどうもそちらに行くことが出来ないと言う旨を母親に伝えたところ寝たきりのはずの母親が果物包丁と魚包丁を両手に持ち可哀想にお前の足を斬ってやるから安心おしと包丁を振りかざしたのでとっさに私は母親を殺害してしまった。
気付かなかったが花瓶が突き刺さった私の足のつけ根から黒いどろどろとした透き通ったものが流れ出て母親の血液とまじっていた。
黒いどろどろとしたものは乾くととても硬くなり私はこれを売ってひと商売してやろうと考えた。
これでもう母親の年金で暮らすことは出来なくなったが刑務所での新しい生活や出所後の商売のことを思うとこれまでよりかはましな生き方ができるように思えた。




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