hiropooooo2007-10-08

[ツアー]君と僕とあなたとツアーの終わりと続き。


高校生の時、恋をしていた。
その頃僕は、なかなか優秀な学校に通っていたのだけど、あっという間に落ちこぼれて、学校に行ったり行かなかったりしていた。
掃除時間に英単語帳を開いているクラスメイトとなんか何も話す事はないと思っていたし、休み時間にプロテインを飲んでるラグビー部の連中とも馴染めるわけはなかった。
「お前らとは違うんだ。俺は特別な人間なんだ。・・・ま、何にも特別なことなんてないんだけどね。なんとなくそう言ってみただけ。ていうか何でこんなに死にてーんだろ。」
毎日悶々としながら、美術部だった僕はサザエさんがマスオさんの首を絞めながら犯し、タラちゃんの首を持ってぐるぐる回す絵を机に描いたりしていた。机の下に『新興宗教オモイデ教』や『中原中也全詩集』、『僕に踏まれた町と僕が踏んだ町』などを隠して読んでいた。その後「その他」というバンドを一緒に始める茂平は学校を辞めてしまってますます寂しくなった。
子どもの頃、日曜学校に行っていた僕は、学校の近くにあったそのキリスト教会で出会った高校生ノリくんとエヴァンゲリオンについて議論する一方、ある女性とセックスをして、自分がとても汚い人間だということが分かった時期でもあった。自分が大っ嫌いで、恋してるやつらなんてみんなバカだと思っていた。
けれど、僕は、恋をしてしまったんだ。
彼女は本が好きで、文芸部でステキな小説を書いていて。僕はそれを読んで好きになってしまった。最初はその人のペンネームしか分からなかったけど、実は同じ図書委員のIさんだという事がわかった。
どうやったか覚えていないが、挨拶することくらいはできる関係になった。目を見たりとかできなかったけど、次第にちょっとおしゃべりできる関係になれた。そ、『アストロ球団』を貸したりしてた彼女です。


ある時Iさんに、「工藤君は将来、何やりたいの?」と聞かれた。
僕は何かの表現をする人になりたくてたまらなかった。けれど、
「何も考えず働けるヒヨコの分別をする人になりたい。それか・・・吟遊詩人。」
バカ過ぎる返答をしてしまった。
いやでも、ヒヨコはホントに冗談だったのだが、実は吟遊詩人は照れ隠しだった。
なんか変なバンドやってて、ツアーに行ってたりしたい。今は何もできてないけど、いつか絶対やってやる。


そう思っていた。


それから10年も経ってしまった。


2007年9月24日大阪、9月29日名古屋、10月6日渋谷。
あの頃着てた学ラン着て、ヒロポはミシガンっていう大学で知り合った相棒と一緒にゲリラライブをして回った。
昨年末に復活を遂げた、筋肉少女帯のツアーを追っかけながら会場周辺で勝手にライブをするという、はた迷惑でお騒がせで、ウザくて徹底的に常識を笑い飛ばしたツアー。
筋少ファンのニャンダさんに「交通費出すから。」と誘われた時は驚いたけれど、僕たちバイナリキッドみたいなへんなバンドにぴったりだと思った。
合計、8回のライブをした。


どれもこれも波乱ばかりだったけど、最終日、渋谷のゲリラライブでは投げたギターが顔面にぶつかって、ヒロポは鼻血が止まらなくなった。
ライブ初めてすぐに警備員に怒られて、ギター壊してしまったり、何やってんだか自分でもわからなかった。無我夢中だった。あなたが見てくれていたから、無我夢中で自分をさらけ出すことができたんだ。


その後、インターネットのオフ会でライブやらないかと誘われていたので、渋谷中を爆破して回りたい気持ちを溜め込みながら会場に向かった。
この街をウンコばくだんでメチャメチャにしてやろうか?と考えていた。
僕は全世界を壊したい。けれど、全世界を救いたくもある。そんなことは僕なんかにできっこないし、そもそもこんな考えはおかしいと分かっているのだけど。
つまり10年前から何も変わっちゃいないんだ。もがき続けている。僕はヒロポになっても自分が嫌いだ。



こんなバカバカしいツアーで最後のライブ。最後にふさわしいライブができた。
目の前にいる人達は、筋少が好きで集まっている人達で、だけどそんな人達だからこそ、ヒロポとミシガンが作ったバイナリキッドの曲を聴いてもらいたかった。爆笑してもらいたかった。びっくりしてもらいたかった。楽しんでもらいたかった。
みんな笑ってくれた。誰が用意したのか、ソーセージ振ったりしてさ。
隣ではミシガンがタイコ叩いて歌っていた。ミシガンとは名古屋のライブがうまく行かずに手羽先屋でケンカしたよね。
客席の真ん中に、今回僕らなんかの為に大変な金額を出費してくれた幹事のニャンダさんが見えた。くそったれ!ありがとう。
そして視界の端っこには、あなたがいてくれた。あなたが、ツアーの最後になってやっと来てくれた。


あれからちょっと日にちが経ったけれど、あなたに「あの時のライブ、どうだった?」なんて聞けやしないまま過ごしている。
だって、まだまだ途中だもの。
他のバンドのライブ会場前でゲリラライブするなんて事はもうしないけど。
ツアーはもう終わってしまって、遠い昔の出来事のようだけど。
なんだが、夢の中の出来事のようだけど。
これから、あなたに見てもらいたい事がまだまだあるんだ。




つづく