チャッピーは夢の中で

僕がこれまでに最高に愛したネコは「チャッピー」と言います。
アメリカンショートヘアのオスネコで、でっかくて、くりくりおめめで金玉抜かれてる、かわいいやつ!


僕が学校を卒業して印刷会社の営業職をしていた頃、チャッピーの絵を描いた事がある。
同僚の女の子が「工藤くん、絵が上手なんでしょ。見せて」と言うので、鉛筆で描いたデッサンを見せた。


「すっごー!上手いじゃん!」

これくらい当たり前だぜ!
一応、これでも僕の絵はアジアレベルって事になってるからね!ふふふのふ。

「でも、死んでるみたい(笑)」

自慢話が鼻についたのか知らないけど、そいつはイヤミな事も平気で言える素敵な女の子だった。

だから僕は、本当の事を言うしかなかった。

「だって、この絵、昨日チャッピーが死んだとこ描いたんだもん。」


僕は悲しかった。
チャッピーがいなくなったから。
もう二度とこんなかわいい子はいないと思った。
いつかまた別のネコと暮らすなんて、考えられなかった。
寂しくて、頭が狂いそうだった。なんだかひとりぼっちのような気がした。
家族もみんな悲しみに暮れた。


でもだんだん時間がたって、少しずつチャッピーの事忘れてさ。まだ他のネコなでたり、かわいがる気にはならないけれど、ちょっぴりだけれど、またネコが飼いたいと思うようになってきた。


でもチャッピーはやっぱり僕にとって特別な存在で、とても愛していた。
いや、ちがうな。
僕とチャッピーは愛し合っていたんだと思う。
チャッピーがいなくなってからわかった。
思い込みかも知れないけど。
飼い主と飼いネコなんて関係よりも、友達だったんだと思う。





新世紀バイナリキッドの練習で、新曲やってみた。
僕はふざけた曲しか作れない。
ヒット作を連発しているボーカルユニットやアイドル達、音楽番組でプッシュされているバンドみたいな素敵な曲は、僕が心の底から今が幸せだ!と思っても作れっこないだろうな。へんな曲ばっかり歌いたい。


悲しいんだもの。
君がいないことも、今がとても幸せな事も。






家に帰って、僕が今恋をしている女の子に「新曲のタイトルが思い付かねー」とぼやいてみた。
女の子は「じゃあ、『チャッピー』がいいよ!かわいいし!」と笑いながら言った。
僕もアハハと笑いながら「それいいなー」と答えた。


新世紀バイナリキッドの初ライブまでもうすぐ。
写真は犬のアップルくん。