×新世紀 ○バイナリキッド

 高円寺スタジオDOMにいつも、ラリッた男の人がふらふらしている。バイナリキッドはよくこのスタジオで練習しているんだけど、昨夜の練習で、ラリ中に僕たちは怒られた。
「お前ら××やったことねぇんらろ? 仕方ねぇなぁ〜。まともなやつは」
 彼は何かに「追われている」らしい。いつも絡んで来て、ウザい。けどおもしろい。
 しかし今回はなんかカチンときて、「キノコならありますよ」とラリリ男をからかってみた。シイタケとか好きだしね。すると、
「キノコなんかダメら! ××をな……注射針でな……ちょうどこんな女の子(パンダの“ぐ”)のクリ●リスにブスーッ! と刺してだな…………。
 お前らやっぱだめだああ! 10年後を見ろ! そしてな……親に金をあげなさい。俺はそうしてきた」
 言ってる事メチャクチャだ。それからいろんな説教をされ続けたけど、からかうのにも飽きたし僕たちは練習を再開した。




 しばらくして、突然、ガチャリとスタジオのドアが開き、ラリリ男が入ってきた。
 僕たちは演奏を続けた。「これは訓練ではない。本番だ」なんかのマンガのセリフがよぎったのは僕だけじゃなかったんだな。僕は服を脱ぎ捨て腰を振り、“ぐ”はキーボードを殴りつけるように弾き、ユウスケ君はすばらしいライトハンドを決め、ヘイコックはロールを回し、ミシガンは骨にヒビが入っているのに絶叫するもんだから、肋骨を押さえて「うぐぅ」と洩らした。

「おまえら……か、カッコイイじゃん……ご、ごめんら……」

 ラリリ男はそんな僕たちをまのあたりにして褒めやがった。特に「ろラムがいい。ろラムうまい!」とヘイコックを絶賛しつつ、そしてソファに寝そべり静かに目を閉じた。


 練習が終わって、僕はユウスケ君と“ぐ”とヘイコックに「ちゃんとしたメンバーにならない? “サポート”なんか取っちゃってさ」と言った。彼らはもちろん承諾してくれた。その代わり、ヒロポとミシガンがサポートメンバーになることを提案した。しかし当然ながらこんなつまらない冗談はすぐさま却下された。



 9日は高円寺ルーツで大好きなMIRとイアンの企画に出ます。このところ、あるきっかけがあってじいこういとロックについて考えている。ついに『母さん、なんでウチにはファミコンないの?』のステレオで聴けるやつがバイナリ事務局に届いた。僕たちの生きる証! しかし先日は九州のおじさんが突然なくなったりもしました。生きるってなんだ? なんなんだ? なんなんだよ! 頭の中がぐるぐるぐるぐる〜。