ハミガキガミハ

お兄ちゃんっち、息くせーよな。

子どもの頃、妹のふとした言葉がショックで、ハミガキに燃えた。
ヒロポは中一の時、初めて彼女というものができた。手を繋ぐのがやっとのプラトニックなものだったが、お兄ちゃんは息がくせーんである。気にした。


学校で行われた、歯科講習も真剣に聞いた。しかし毎年、少しずつちがう情報が入ってきた。テレビでの情報と違う部分もあった。医師の学者としての意見の違いである。


そこでヒロポは自分のやり方を発見しようと考えた。とにかくみがくのではなく、やさしく、ときとして大胆に。まるで恋人である。
彼女とは、付き合う前は仲良かったが、一年ほどして別れた。ケンカしたわけではない。付き合ったって何してよいかわからず、ただドギマギしてお互いろくすっぽ喋れなかったのである。それでもヒロポはマジで結婚しようと思っていたが、あっけなくフラれた。そして、ま、いっか、と思った。我ながらこの落差はわからん。


恋は終わったが、ハミガキには情熱を傾けた。 舌で歯にふれてツルツルになればO.Kである。歯間ブラシなどで歯こうをとった。フッ素入りのハミガキ粉がよいと聞いては母親にねだった。今お勧めは、「スミガキ」という炭入りのハミガキ粉である。500円位するが、効果は絶大である。


甲斐あって、もう、お兄ちゃん息くせーとは言われなくなった。しかし、口臭なんてものは自分ではわからないものである。まだ、周りに迷惑をかけているのではないかとドギマギしている。
ヒロポの息が臭くても、そっとしておいて欲しい。気にするから。