たいそうのお兄さんになりたかった

公共図書館で働きだしたヒロポ。早速、怒られた。誰に?客に。
日が暮れた頃、配架作業をしていた。配架って立派そうだが、単に本を棚に戻す作業である。すると、閲覧室の隅から「う〜。」とか「あ〜。」など、うめき声が聞こえるではないか。不審に思ったヒロポがそちらを見てみると、そこにはグルグルと腕を回したおっさんが揺れていた。
体操しているのである。図書館で。おっさんが。
無視しようかとも思ったが、そういうわけにもいかない。ヒロポは声をかけた。
「あの〜、あまり大きな動きは・・・。」
いなや、おっさん曰く、
「なんだお前新人のくせして。年寄りが読書して疲れたから体伸ばしてるんだ。偉そうにするな。こっちは10年通って館長だって知ってんだ。クビにするぞクビに!」
怒っちゃってるよ、この人。笑いそうになるのを堪え、「すみません、ただ、ここは図書館・・・。」
ヒロポが言い終わる前に、またなんか言い出した。「もっと勉強しなさい。」とかなんか言っている。おお、おお、関わって良かった。へんなヤツ発見。
結局、体操し続けるおっさんであったが、もうほっとく事にした。これが一番丸くおさまるだろう。
しかし、そこにやってきた若い兄ちゃんがヒロポの肩をポンと叩き、「お兄さん、気にしなくていいよ。」と声を掛けてくれた。
「ぼ、ぼくは大丈夫です。」とよくわからない事をいい、その場から逃げるように立ち去ったヒロポ。頼むからおっさんの前で逆上するような事をいわないでくれ!優しいふりして近付いて自分だけ納得するような怒りを発散しないでくれ!ちょっと、焦った。


優しさのつもりが、人を不快にさせたという、こわいお話でした。兄ちゃん、言葉に気を付けな!
体操おっさんはもうイヤ!