父からメールがきたんよ。以下。

    • 寛之は四月から正社員になれなかったらしいけど、そろそろその日暮らしはやめて自分の現実を踏まえから将来の事しっかり考えなさいよ。またには顔見せに来なさい。


ヒロポの父は、かなり変な男である。
出生は九州の貧乏大工の息子だ。地元で一番ヤンキー(当時はなんというのか。ツッパリか?)高校を卒業し、工場のエントツ洗いの仕事から始まり、今では台湾に本社がある会社の日本支部ジェネラル・マネージャーかなんかよくわからない肩書きだ。よって、英語と中国語が話せる。しかも「静電気をいかにして起こさないか」など、これまたよくわからない論文を雑誌に書いていた。
かっこいいだろう、ヒロポ父。と言いたいところだが、やはりヒロポの父である。
日本語おかしいし。ついでに言うと英語も中国語もかなりハッタリかましシックス・センスで話している。
ある日、東大の教授方に向けて講演会を行った父。一通り話終って、質疑応答の時間になった。すると、ある教授が「先ほどの○○の理論は××の△△の式に当てはまると言うことでしょうか。」
父は、質問の意味が全く分からなかったらしい。だが、
「そういうことです!」
・・・適当に答えやがった。


家庭ではどうか?
ある日、ヒロポの妹とケンカした父は荷物をまとめて家出してしまった。妹などは「どっか女のとこでも行くんやねん!」かなりキレていた。しかしヒロポは知っている。その夜、父がひとり車の中で眠っていた事を。ヒロポは心配して「頭に来てるだろうけど、一週間以内に帰ってきてな。」と電話で話した。数時間後、朝方「体がいて〜。」とぼやきながらマッサージ機でウィンウィンブブブしている父の姿を見た。な、情けない!


ヒロポは父を、越えることが出来ない。彼の月給77万だし。会社の損失、七億の保証金をゼロにする男であるし。ザケンナ!しかし同時に、父もヒロポを越えられない。エディプス・コンプレックスは息子の父親殺しだけでなく、父←→息子の関係であると思うからだ。


だから、父親らしい、ヒロポがどんな考えを持って今の生活をしているかを無視した、ヒロポを不快にさせるメールを送ってこようが、ヒロポは許す。
父は昔、信念を持ってエントツ掃除をしていたのだ。