恋人よ、道連れよ、黒いチワワ、君の吐く息は

一昨年の正月に、ムカつく家族を殺してヒロポも死ぬ、と決めて以来。
久しぶりに(電車で一時間半の)実家へ。
ヒロポは家族が大っ嫌いなのだが、愛してはいる。クドウ家は変人ビッグショーなのだ。


そんなクドウ家のアイドルが、エロ犬アップル(オス)。
妹の白雪(仮名)が好きな香取慎吾の飼い犬と同じ名前を付けられたこの犬、かわいい。
テツヤ(ヒロポの父、本名)の足でいつも腰をふっているが、ヒロポに逢った途端、ベロちゅーしてきた。うっ…。


驚くほど、イカ臭い。


白雪はアップルをかなり愛しているのか、平気なようだ。
「臭くねーもん。」
いや、臭いよ…。
ヒロポはアップルと白雪のベロちゅーを見て、いつも感心すると共に、心配にもなる。


アップルは10歳くらいだが、未だにトイレを覚えてない。よって、実家のいたる所にションベが。散歩に連れて行くようになってずいぶん漏らさなくなったようだが。


アップルを抱き締めた。
アップルの首筋は、なぜか、ほのかに、わたあめの匂いがした。
ヒロポは驚いて、アップルの首筋に鼻を押し付けて思い切り深呼吸してみた。うっ。


獣の臭いがした…。


おかしいな、と思い、少し離れてかいでみた。
すると、やはりわたあめの臭いがした。


あんなに仲良かった父と母が、同じ部屋で、別々に寝ていた。
全ての出会いと恋は終わっていく。
そんな考えが、延々と肺の辺りにたまっていく。
信じたくないんだ。
終わりがあるなんて。
いや、違うな。
終わる、なんて受動的なもんじゃないはず。
終わらせる、もんだよね?
でなければ、いつまでも続けられるんだよね?
ようは続けたいか、終わらせたいか。
恐ろしいことに、自分で決めるもんなんだろうな。
父も母も愛してないなら、さっさと別れちまえばいいのに。
幸せになってほしいよ。