11日目 その3 スローハンド、囁く声 アニュウリズム

まだまだ続くぜ、ゲストを迎えてのレコーディング。


ミシガンの曲で『21世紀、宇宙の孤独』という歌がある。
ロフトで配布した「予告CD」に、デモが入っている。
この曲を、今回のレコーディング予定表のセットリストに入れたとき、ミシガンはヒロポに言った。
「『21世紀』入れるの辞めね…?」


他の曲と比較して、あまりにもしっとりしすぎている。
歌詞が青臭い。
歌に自信がない。
そんな理由をとつとつとミシガンは述べた。


何言ってんだ。
大丈夫だ。
あの人にギターを弾いてもらうんだ。
アニュウリズムくんに!


アニュウリズムくんは、たったひとりアコギだけ持って北欧からやってきたかのような青年だ。透き通った憂鬱気な声で、嵐のような歌をうたっている。美しい少女の絵も描いていて、たぶん、その内なにかで、ちゃんと世間に認められる人だと思う。
そんな彼の指が織り成すギターの旋律を、ファミコンの音に重ねたらどうなると思う?


でも、なかなかいいテイクが録れなかった。
だから、作曲者のミシガンに指揮をやってもらった。
指揮。
ヒロポはあまりにも体力を消耗したので、屋上で休むことにした。
20分たって、月本さんとスタジオに戻ったら、みんななかなか確信に満ちたような顔をしていた。
もう1テイク録って、コーラスを入れてもらった。



「アニュウリズムくんにやってもらって、ほんとに正解だったな!」


今日のレコーディングが終わって、ミシガンがホクホクした顔でそう言った。