悲しい映画観てしまった。
夢みたいに悲しいやつだったなぁ。
映画学校の学生さんが、精神病で死んじゃう話だった。
でも、自殺じゃないと思うんだ。
彼のお母さんが、カーテンを開けたとき、ちゃんとベッドの上にいたから。
枕元に薬がたくさんちらばってたけど。
彼はちゃんと生きようとしていたから。
だってさ、彼は映画学校のおじいちゃん先生に、手紙を書いてたんだ。
既に彼は学校を自主退学していたんだけどね。
調子の良いときもあるけど、ヒドイもので、具合はだんだんと悪くなるんだ。
彼を分かってやれる人なんて、近くにこれっぽちもいなかったからだろうな。
だから、先生に手紙を書くことだけが、世界と彼を関係させるものだったんだ。
先生はちゃんと全力でお返事書いてた。えらいなぁ。やさしいな。
僕の友達で、I君という人がいて、よくメールしたり電話で話したりする。
あまりうまく伝えられていないけど、僕は彼の事が大好きで、たぶん彼は同じくらい僕の事を好きでいてくれると思うんだけど、電話やメールでしかやりとりできないところにいるので、よくさみしくなったりする。
別に僕もI君も精神病じゃないけど、ちょっと世の中にうまくなじめないし、どちらかと言うと自分の事があまり好きではないので、どうしたらうまくやれるか、とか、いやうまくやってるよ、とか、逆にうまくやる必要なんかないぜ、とか言ったりしてる。
もう何年もそうなってしまってるから、たぶんずっとこのままなんだろうと半ば立派に生きる事を諦めている。
僕は、I君から届くメールが総ての支えに思える時がある。
映画を観ながら、I君も僕と同じような気持ちになることがあるのかもしれないな、なんて考えたしまった。
僕はバイナリキッドっていう、もーなんかわけわかんないクソみたいなファミコンハードロック歌謡パンクバンドのひとりなんだけど、最近、新曲ができたので練習してる。
『エンディング・テーマ』っていうやつで、なんでシングルのカップリングってあんなに地味なんだろう、って思っちゃうんだが、そんな風に地味な歌(笑)
だけど楽しく踊れるやつ。
映画の中
ラストシーン
キスしてた
あのカルトムービー
でもふたり
さよならさ
大丈夫
これは全部つくり事
でもだめだ
いつかくる
それが今 お別れさ
さようなら
こんな感じの歌。
僕はキスシーンで終わる映画、クソだと思ってた。
最後に男と女がキスしながらカメラがぐるぐる回ってて、英語の歌が流れたりしてさ。
ハリウッドのやつなんかほとんどそんな感じで終わってて、アホが! って思ってた。
こういった類のものは、まったく、ちんぷであります。なんて思ってた。
でも、今はそんな風に思わなくなったんだよね。
いろいろ考えは変わるもんで、自殺したN君の事も、僕の中で今と昔じゃあ、なんか捉え方が違ってきてる。
I君と、たまにN君の話をする。
N君は僕の中でいつまでもいつまでもあのままで、昔は「なんで死んじゃったんだろう」って話をしてたけど、もうそんな話はしなくなった。
自殺する前は、ずいぶん調子が良くなってたんだ。
もう少しで退院して、また新作の小説とかマンガとか見せてもらうのが楽しみだった。
へたくそだったけど、才能あったんだよなぁ。
すごくおもしろかったもんなぁ。
I君と僕は、N君の共通の友達で、だから、「絶対に自殺だけはせんどこう」って約束した。
映画を観てて、あの学生の手紙はI君がくれたあの時のメールと似てるな、とか、僕もおんなじこと思うんだ、とか考えてしまった。
学生役の俳優さんは、僕と同じくらいの年でね、演技だけどさ、調子の良くない時のN君みたいな目をしてた。
ホントそっくりだった。
上手だな、演技が。
たしかに、あの表情だよ。
ちょっと違うけど、すごく似てた。
N君かと思った。
むかついたわ。
でもラストシーンでさ、桜がキレイでさー。
しかし何を表現したいのかなんて、僕には全然分かんなかったな、あのシーンは。
ただ桜がバーーーッて。
なのにとんでもなく涙が溢れてしまったよ。
キレイなものが映ってるだけの、しかも桜なんてみんなが好きに決まってるちんぷやつが映ってるだけのシーンで、嗚咽が出るくらい。
たぶん映画観ててこんなに泣いちゃうのは最初で最後ってくらい涙がとまらなかった。
エレベーターに乗るのが恥ずかしかったから、映画館は10階だったけど階段で1階まで降りた。
御茶ノ水駅まで大通りを歩きながら、せっかく我慢してたのにまたポロポロ涙が出てイヤになった。
めんどくせーなーもう。
ひとりぼっちになるんだってとっくに知ってんのによー。
あーもー、ホントに、こんなんなって。
しかたねーなー。
どいつもこいつもさ。
タイトルまでも『夢のまにまに』なんてちんぷなのつけやがってさー。 あーもー。
あー、今日の夜は久しぶりに電話してみよかな。
しばらく電話してなかったなー。