■ミスター・チンが燃えた話

こないだうちの近所で、凄まじい火事だったんだろう。出てくる出てくる消防車がワンサカと!
いったいどこで火事なんだろう?
気になったが急いでいたのでそのままバスに乗って高円寺へ向かった。
自分のブログを見返してみてびっくりだ。
実に2年ぶり。
ドタマカチワルドでライブをすることになって、高円寺のスタジオで練習に励んだのだった。
ミシガンと“ぐ”とヒロポ。
久しぶりに3人で歌ってみるとヘンテコリンでパンクで突き抜けてて、練習後のラーメン屋もおいしくて、要するに僕にとって価値のある音楽(と、ラーメン)であることは間違いなかった。
パンクさいこー!


それにしても、パンクって一体なんだ?
今のところ僕の中では「かっこいいものは全てパンク」だということになっている。ヘンテコリンなものってかっこいいとも思ってる。ヘンテコリンなものが好きなんだ。いつでも僕は衝撃を受けたいし、いつもどうやったら衝撃を与えることができるか考えている。
僕にとってのパンクな行動は、人から見たら変かもしれない。けれど、時々は精神が近い人と出会えて、そんな人には納得してもらえる。


たとえば、目の前に空き缶が落ちていたとする。
まず、普通の人。そのまま素通りする。
次に普通のパンクス。その空き缶を拾って投げたり蹴ったり、やらんでいいことをする。アナーキーストは灯油なんかを入れて火をつけたりするかもしれない。
けれど、僕の中での本当のパンクは、その空き缶を拾ってゴミ箱に捨てるってことだ。
普通の人も、パンクスも、誰だってまずそんなことはしない。
だから、その逆をする。
これが僕の考えているパンクスの姿だ。
「やらんでいいこと」をするのが普通のパンクスで、「やらんでもいいけど、むしろやったほうがいいことをやる」方が、パンクを否定していてより新しい考え方と言える。


この考え方は僕の行動の規範になっている。
ドタマカチワルドの充実した練習(と、ラーメン)が終わり、帰りのバスでのことだ。
僕は本当は性根が腐っているくせに、パンク魂が災いして、お年寄りに席を譲ってしまった。
「どうぞ!」
なんて余計なことは言わずに、無言で席を立って、離れたところへ行く。
こうしないとむやみに感謝されてしまったり、「いえいえもうすぐ降りますから」と断られたりしてしまう。
これを防ぐためには滅私の精神が必要で、つまり、「別にあんたに席を譲ったわけじゃないんだからね」という顔でだまって席を立つのが配慮というものだろう。
この優しい世界を作る行動こそ、パンクだと思うのだが、いかがだろうか。


ほどなくしてお年寄りは停留所で降り、僕は元々自分が座っていた席に座ろうかとギターを持ち上げたその瞬間、さささっとセーラー服の何者かが乗り込んできた。
この日、まだ雪が残っていた。にも関わらずコートを身に付けない軽装。胸元のスカーフをひらめかせている。何やらガタイがいい。身長なんて僕よりある。うわ、その顔は、まるで、いや、まさしく男性だった。
突然のセーラー服男を観察してしまった僕は一歩出遅れ、彼に席を譲ってしまった。
軽く会釈をして席に座るセーラー服男。
僕は観察を続ける。
中途半端な長さの髪の毛をひとつ結びにしているが、中途半端が故に束ねきれない毛がピンピンはねている。青ひげ。表情はなぜか微笑。学生カバンに似ているが異なる形状のカバンに、安物のアクセサリーがキラリと光っている。僕の目も輝く。やったーラッキー! どう考えても変態だ!


しかしふと思った。
こんなに僕を魅了する彼はある意味、パンクスなのではないだろうか?


革ジャン着て速くてうるさい音楽をしている人だけがパンクスではない。
世の中にはパンクなサラリーマン、パンクな専業主婦だっている。
パンクな生活の中にパンクな日々があれば、きっと楽しいと思う。


バスを降りた僕は自宅に向かう途中そんなことを考えながら歩いていた。商店街も終わりに近づいたとき、足元が水浸しなのに気がついた。
行きにあった火事の消火がちょうど終わったようだ。
出火元はボロくて汚くて、定食を頼んだらめっちゃ大盛りで出してきそうな街の中華料理屋「ミスター・チン」だった。
なんてことだ。
店員さんの楽しいパンクな日々は、焼け果ててしまったのだった。

それから数日が経って、店の前を通ると、ミスター・チンは火事を乗り越え復活しようとしているようだ。
お店は燃えちゃったけど、新たな夢に燃えているのだ。
これって、物凄いパンクだと思う。
普通の人だったら、そこで何もかも嫌になって逃げ出す。
普通のパンクスだったら、いっそのこと全部ぶちこわす。
ミスター・チンは違う。立ち向かった。自分が起こした火事なだけにつらいだろうけど、そんなこと言ってられない。ボロくて汚いけどせっかく焼けたんだからきれいにしてまたお客さんにメシ食ってもらうぞ! ……と考えたかは知らないけれど、僕はミスター・チンの行動と手書きの貼紙に尋常じゃない衝撃を受けた。


僕が糞みたいになっているとき、こんな夢をよく見た。
ライブをやろうとしても邪魔が入ったり、都合がつかなくて結局演奏できない夢だ。
夢は人の精神を現しているという。だったら夢のリベンジやってやる!
2015年3月7日(土)大好きな高円寺の円盤で、カシミールナポレオン企画でパンクなミュージシャン達との共演!
3月はもうひとつ、15日(日)に京都の「狂犬の中の狂犬」がいよいよ東京でライブ! 僕はそれにソロで出ることに!
狂犬の中の狂犬は凄いバンドだ! 以前僕がほれ込んで東京でのライブを企画したことがあるくらい!
ヘンテコリンでパンクなイベントがふたつ!
楽しみだぜ!

2015/03/07(土)@高円寺円盤 2年ぶりのドタマカチワルドライブ!!

カシミールナポレオン魔界(福岡)帰還!! 下界(東京)ラスト・ミサ!!」

18:30-/Charge¥1,500(1drink付き)

■出演

カシミールナポレオンK

メカコンチ

エーツー2コ

ヒューマン(INN JAPAN)

ドタマカチワルド

■悪魔カレー

クックマッド・ダーヨシ

■DJ

たかだたたみ

カシミールナポレオンKが東京に(転勤で)降臨し丸10年!魔界からの使者も会社からの辞令には逆らえず4月より地元福岡に帰還!帰福前最後に、お世話になった円盤でお世話になった方々をお呼びしてミサを開催!

2015年3月15日(日)@大塚MEETS

「狂犬の中の狂犬が東京に来るよ、の巻」
open18:00 start18:30(予定)
前売¥1600 当日¥1900
■出演
狂犬の中の狂犬(京都)
SNCQ
くつした(京都)
リリリ
クドウヒロポ