3月が終わるまではと思っていたけど

先日、勤め先の小学校で卒業式に出席した。僕は小学校の図書館で、ちびっこたちに本を手渡したり、教員に図書館の使い方を教えたりする仕事をしているんだ。けれどそれも本日付でおしまい。僕は小学校での勤務継続を希望していたが、あえなく異動となってしまった。


君たちの卒業式は、立派だった。「呼びかけ」の言葉だって、親や教師の指導の元に言ったんじゃないって事がよくわかった。自分で考えて、選んだ感謝の言葉たちは、純粋に参列しているオトナひとりひとりの胸を熱くした。

桜が少しだけ咲いていた。図書館から眺める校庭の桜の花は毎年特別美しく思えたのだが、今年の満開はもう少し後らしい。君たちの卒業式に満開でなかった桜だけれど、それでもきっと君たちにとって特別な樹木になるんだろう。僕は桜の花も、木も、葉っぱも実も好きなんだ。大好きで桜のことならなんでも知ってるぜって訳じゃなくて、なんとなく、程度なんだけど、こういう気持ちでいる事が心地良かったりもするんだ。

卒業式が終わって、君たちが教室と最後のお別れをする時には、雨が降っていた。君たちは中学校で着るぶかぶかの制服を着て、雨なんかお構いなしに校庭に飛び出した。男子も女子も、胴上げをはじめて、校長先生の禿げた頭を触って笑い合っていた。さっきまで泣いていたまっ赤っかな目を細くして。

もちろん、胴上げに参加しない人もいた。なんで泣いたりするんだ?という顔な人もいた。僕はそいつに「写真撮って」と言われた。お約束で「じゃあ僕が撮るからさ、カメラ貸して」と答えると君は「違う、一緒に撮るの」と母親にカメラを手渡した。僕は君が低学年の時から知っている。君の兄貴がどんなやつか知っているし、君の父親がどんな人なのかもちょっぴり知っている。そして君の母親が「ありがとうございました」といい、君は「くどーしんいちーサンキュー!」と言った。どうしても僕の事を名探偵にしたいらしい。

ともかく、桜が咲いた頃にはもう僕は君たちの母校にはいない。偉い人が考えた妙な空想を実現させる為に違うとこで仕事やれってさ。君たちの突然のうんこスクリームには毎度驚かされた。あの絶叫をいつまでも聴いていたかったよ。君たちには内緒にしてたけど僕は音楽が好きなんだ。聞く方より、やる方の。だからバンドやってる。僕はメロディ考えて、歌詞を考えて、歌う。ファミコンみたいな音のピコピコを鳴らしながら演奏すんだ。おもしろそうだろ。うんこスクリームにゃ負けないぞ。