ドコに客を追い返す店主がおるか!此処に。

「表にある碁盤はいくらですか?」
珍しく(本当に珍しく)その重いシャッターを開けた古道具屋七福に、絶滅危惧種に認定された生物、“お客様”が来た。
「3500円。」
ヒロポの雇い主でもある店主はぶっきらぼうにそう答えると、いつもように面倒くさそうな顔をした。
「安いですね、もう少し安くなりますか?」
客はまずまずの好反応だが、どうやらこの店のことわり、ルールってモノを知らないらしい。


店主がアホだということわりを。

かといって、ヒロポもそんなに知っているわけではないのだ。
マリオが「3500円。」と応え、客も良い反応をしめした以上、なんとか(ヤフオクに出品するわけでもなく)無造作に積みあげられた、この碁盤、否、ゴミをひとつでも売りたいと考えるのは、働いて賃金を貰うヒロポの立場からすると当然の使命。ここで売らねば、約立たずと言えよう。
さて、客は、一部ではテレビ取材が決まったと噂されるこのゴミ屋敷に無秩序に積まれた商品を指差し
「これらの碁盤は全部値段が違うのですか?」
と、質問をしたのだが、マリオは全質問、無視をきめこんだ。
方や、ヒロポは、ごくごく常識的な人間(だよな、みんな。)、こんなどうしようもない古道具屋で働くような小市民なので、出来る限りの接客と会話を試みた。
「たまにしかシャッター開けないので、今日がお買い時ですよ。」
この一言で、客は、買う気満々になったのだが、ここで取り返しのつかない疑問が出てきた。「なぜ店を開けないのか?」追い討ちをかけるようにマリオの一言。


「売ってないんだよね〜。」(空、と書いてクウと読む、に向かって。霊感?)


客は当然、
「えっ…?どう言うことですか?」
驚いて、両目をカッ、と見開いた。恐らく、「こいつらどうやって生きてんだろう?」「さっき3500円て言ったのは、3500円で売るということの表れじゃなかったんだろうか?」「なんで俺、こいつらにこんなに嫌われてるんだろう?」と、いうことを考えていたに違いない。だって、ヒロポもそう思うもの。そこで、ヒロポはなおも食い下がって、
ヤフオクです、今はヤフオクで主に売ってるんです。」(だから安心したまえ、客よ。)
と、応えた。


するとマリオは非常に不機嫌になり、
「オークションで売ってるなんて言わなくていい!恥ずかしい!どうせこの客も買わないんだから、相手しなくていいんだからね!」
ヒロポの思いも虚しく、逆に叱られてしまった。じじーの為を思ってやってんのによー!潰れろ!
当然、その後、ツチノコ並に珍しい客は消えた。残ったのは、
「ホラやっぱり何にも買わないんだよ何十年もやってっからわかるんだよオークションなんて言わないで!」(×10回)


マリオの愚痴と、ヒロポのイライラ、険悪な空気、であった。
仕方ないので、わりと綺麗な、しかもKENWOODのCDラジカセをパクった。そして、家に帰ってMOTOR PSYCHOのCDをセットした。
 NO DISC
なるほどね、そう来たか。


こんなひろぽですが
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すみませんね、うわ、えっげっつっなー!