小学5年の新学期、ジュンてやつが転校してきた。
身体がデカくてウルフカット。
柄の悪い地域から越して来た彼を、クラスメイトは少し怖がりながら遠巻きに見ていた。
転校生ジュンがクラスになじめないまま、運動会や学芸会が終わり、僕たちはそれぞれの家庭でクリスマスと正月を終え、3学期になった。
学年のまとめとして「環境について」だか「戦争について」だか、結構重苦しい内容を授業で学んだ。
クラスがなんだか暗くなって、人間は悪い存在なんじゃないかとみんな嫌な気分になっていた。
そんな授業のまとめとして、作文を書く宿題がでた。
「21世紀の地球」というテーマで、いい作品はコンクールに出すとの事だった。
優秀作品を決めるため、まずは班ごとに作文を読み合い、代表を選ぶ事になった。
僕はジュンと同じ班だった。
僕が自分で何を書いたか覚えていない。
けれど、ジュンの作文の事はよく覚えている。
僕とジュンが仲良くなるきっかけになったからだ。
内容をかいつまむと、
●●●●
自分は21世紀からやって来た。
21世紀と言えど戦争がなくなっているわけではないし、環境破壊も深刻である。
しかもスーファミより凄い本体ででる。
●●●●
このようなものだった。
全員マジメな事を書いている中でぶっ飛んだ作文を発表され、僕らの班は爆笑した。
「ジュン、21世紀から来たん！？
冗談だろ、という顔で僕らが言うと、ジュンは他にも続けざまに言い出した。
「ジュン、合体好きやな〜！」
僕らの爆笑は止まらず、先生に怒られた。
20世紀のあの日、荒唐無稽な夢として語られたドラクエXが、21世紀になって12年目、ついに発売された。
僕の中で「新作ゲームが待ち遠しい気持ち」なんてとっくの昔に消え失せてしまっているけど、ドラクエはジュンがあの時作文に書いた通り、本当に10作品まで続いた。しかもスーファミよりかなりすごい昨日を持ったwiiで出た。何よりエニックスとスクウェアはとっくに合体してる。
予言者かよ、ジュン。ドラゴンボールの事も当てたし、何だったんだあれは。
そうだ、このゲーム、オンラインゲームらしい！
遠く離れてしまった人たちと一緒にドラクエの世界で冒険ができるなんて凄い！
転校しちゃった友達同志や、遠距離恋愛中の彼氏彼女がやったりもするんだろうな。何年も連絡取ってない人や、毎日会ってる人と冒険か〜。なんだかそういうのいいな〜。
それにしてもジュン、今頃何やってんだろう。本当にあの作文は凄かった。
あの作文発表後、ジュンはクラスの中で「でかくて怖い。でも、なんか変でおもしろいやつ」になったんだ。見た目はアレだけど、優しいやつだったなぁ。
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