2010年10月17日、中央線の旧車両が引退した。
僕は九州のど田舎から芸術家を志して上京してきた。
目指すは中央線、高円寺。
アングラとパンクロックの街。
幻想、わくわく、期待と不安を抱えて居を構えた。
しかし実際住んだのは早稲田通りを越えた中野区で、高円寺駅から徒歩15分の大和町だった。
実は、僕みたいな人間はたくさんいる。
ライブの前後に対バンした人と「どこに住んでるんですかー?」なんて話してみると、「高円寺です」なんて言うけど、よくよく聞いてみたら「それ高円寺って言っていいの?」って場所。
大和町に住んでる人結構多かったな。
僕もミシガンも、あの頃はほんとにくだらないことばっかりやってた。
はじめて路上ライブやったときなんて凄かったんだよ。すごく楽しかった。大晦日だったな。
たまたま観た外国人がさぞかし衝撃を受けたんだろう。
YouTubeに晒されてたwww
あの頃、路上ライブで漫画絶叫朗読したり、アル中と踊り狂ったり、楽しいことたくさんしてたのに、今残ってるのはこの映像だけってのが儚い。
そして、しょーもないwww
僕はいま隣駅の阿佐ヶ谷に住んでいる。
ここも中央線が通る街だ。
ぼろいアパートで、大家さんが隣に住んでいて、ときどき犬をなでさせてもらったりしている。
だけど大和町に住んでいた頃と変わらず、ミシガンは近所に住んでいて、一緒にバカなことやりたいなっていう気持ちはまだ終わっていなくて、なんだかいろいろあって結局今ふたりでバンドやってる。
来月、僕たちのバンド、ドタマカチワルドはレコーディングをする。
それをひっさげて、大阪と京都、そして阿佐ヶ谷に戻ってきてライブする。
3日連続でライブするんだ。
ずたぼろになりたいんだ。
その先に、何かあると思う。
よくわからんけど、いつもそうやって掴んできたから。
レコーディングを終えたら、バンドは変わるという。
ツアーを終えたら、バンドは化けるという。
僕たちみたいなへたれが、両方短期間にやったら、どうなるんだろう?
やらねばな。
立ち上がらねばな。
どたまかちわったらんとな。
僕は、中央線の全身が太陽みたいなだいだい色の電車、一目見たときから好きだった。
上京して落ち込んで、つっこみたくなる気持ちだってちょっとは経験した。
だけどもう中央線の旧車両に乗る事は無い。
そして新車両に乗ったときに思ったんだ。
なんて乗り心地がいいんだろうって。
テレビモニターがついていて、スーパーマリオが雑学教えてくれたりするんだ。
ほんと、21世紀っぽいよな。
電車だって、変わっていくんだ。
ましてやレールに乗ってるわけでもない人間が変わらないわけないよ。
だから、なんていうか、新しい曲、早く聴いてもらいたい。
あたらしい、なつかしい、はずかしい、そんな曲を一晩で一気に録音する。
だけど、僕みたいなインディーズバンドがそんなことやったって、知ってもらえるのはごく一部。
売れっこない。徒労。赤字。また、労働。それが現実。
だいたいさ、高円寺も阿佐ヶ谷も、土日祝は中央線停まらないんだ。
なーにが「高円寺は中央線の街」だ。
おしゃれぶりやがって!
うそじゃないけど!
ちょっとしたうそつき野郎!
土日に「高円寺遊びに行こっと☆」なんて新宿から中央線に乗っちゃって気付いたら荻窪まで行っちゃったりしたら悲しいじゃないか!
ちくしょー!
幻想きらいきらい!
現実も僕を困らせないでくれ!
まだやりたいこといっぱいあるんだ!
え、あー、なるほど。
幻想は、現実の中にあるのね。
おしまい