いかのおすし、ミシガン

それにしても、どこに行ってしまったんだろう。
金曜の夜から、ミシガンと会ってなくて、ミシガンいない間にバイナリキッドは2回もライブしたんだ。


近頃のミシガンは狂っていた。
「脳みその尻尾が頭の中をかき混ぜやがんだ。殺してぇ。全員殺してぇ。」
夏には、身体が硬直し、手が震えた。
秋には、ヒロポを見る表情が、本気で恨めしそうな目をしていた。
ヒロポはほとほと困ってたし、そんなミシガンなんて、イヤだった。
なんとなく、ミシガンが狂ってる理由は、ヒロポにあると分かっていたから。


で、今日、ひょっこり、ミシガンが帰ってきた。


どこ行ってたんだよー!バカヤロォー!心配させやがって…。



「名古屋に、ムーンライダーズ観に行ってた。はい、おみやげ。」


あ、そう言えば、行くって言ってたね…。
忘れてたよ…。
お土産に、ういろうと、日本酒と、忍のチョーカーをくれた。







そして、ミシガンのお土産はこれっぽっちじゃなかったんだ。


靴につまった砂浜の砂。
雨にどしゃぶられたコート。
忍の里と日本一短い地名に架る虹。
こいつが、ほんとうの雨ってわけさ。


あ、読んでくれてる人には悪いけど、今日はふたりにさせてください。


だってさ、近頃のミシガンは狂ってたんだ。


この数ヶ月、ミシガンはバンドなんてできる状態じゃなかった。
ライブ中に、ケンカしたりして、(主にヒロポひとりが)落ち込んだりしたなぁ。
それでもライブのペース下げたくなかったし、ミシガンがついてこれるか本気で心配だった。
ヒロポがミシガンについていけてなかったんだもの。


でもヒロポは、なんとなく、理由が分かっていたから、待っていた。

そんで、待っていた甲斐がありましてね。
ミシガンは、決着をつけたんだ。
自分自身に。






はじめて、ミシガンの新しいアパートに行ったよ。
お土産の日本酒、人の分まで開けて飲み干した。
コップなんか使わねーよ。ラッパ飲みだよ。間接キッスだぜ。
7時に行って、2時に帰るまで、ずっと話してた。


ミシガンは何度もヒロポに謝ってきたよ。
でも、そんなこと、ミシガンが気付く前から気付いてたよ。
許すも何もないし、ただ、イヤだったのは、何でも話せる仲じゃなくなってたってこと。
きみは、俺がきみのことどれだけ愛してるか知らないんだな。
これを期に、しっかり覚えとけよ。
てめーみたいなキモくてダメなクズ人間と死ぬまで付き合っていく覚悟は、とうにできてんだよ。
そして俺もきみと同じなんだ。


ま、おかえり。


「ただいま。」



そういえば、きみもだけど、ヒロポも、決着ついたんだよ。
ほら、見なよ。
平気だっただろ?
きみのおかげさ。





薔薇に対して、今までごめんな、とか、思ったとしても言わねーよ。
もはや、星の王子さま気取りじゃいられねーんだ。