グミチョコ音楽提供スペシャル!

 なんだか悲しい。

 昨日はあれから楽しい打ち上げ。みんなクタクタで、だけどわいわい打ち上げた。帰り道にちょっと吐いてみようかなと思ったけど、もったいないし汚いからやめた。きっとあの時吐いてたら、ピューッて上手に出たんだけどな。

 家に帰ってメールボックスmixiを見てみると、イベントの感想がたくさん届いていた。「泣いた」とか「笑った」とか「楽しかった」とか、そういう事をもっと素敵な言葉で伝えてくれていた。ゆるゆるだったけど、結局そういうイベントだったんだ。昨日は。

 昨夜「バイナリキッドの映画『グミ・チョコレート・パイン』音楽提供スペシャル」というイベントを企画を行った。「グミチョコ」読んだり観たりして、いても立ってもいらんなくて、なんかやってやろう! って気持ちが爆発した人達を集めた。しかもウルトラゲストで元たまの石川浩司さんが出演して下さった。
「なんで? マジでっ! 本物!?」
 みんなそんな顔をしていたけど、石川さんの歌が始まったらもう世界が全部石川さんだらけになっていた。あーあ、みんなくれば良かったのに! 楽しかったよー! 石川さん大好き! でっかい! 体も器も! 声も!


 会場は無力無善寺という高円寺の超アングラバー。おかげさまで満員御礼! 観に来て下さった方、どうもありがとうございました! 楽しんで下さった方、また遊びに来てください。そうでもなかった方、正直で良いと思います。狭くて音響設備もそんなに良くはなく、わけわかんないところで、マスターも変わり者だけど僕はココが好き。いかがわしすぎるから。
 イベントが始まる前、わざわざ福井からやって来てくれた方と入り口でバッタリ会った。どうやら石川浩司さんが出演だし、しかも本物の大槻ケンヂさんがトークライブしてくれると思ったらしく駆け付けたそうだ。勘違いしてしまったようだけど、今回のトークライブはなんと本物の大槻キンヂくんが出演なのだ! イエイ!

 zig+zagというバンドのキンヂくんはホント愉快なほど筋肉少女帯のギタリスト、橘高文彦さんを敬愛している。僕も大好き! トークライブでは実際に橘高さんに会った話なんかも聞けて感動した! しかし、客席に41歳の童貞さんがいたのでステージにひっぱり上げ、リアルで切実な話をたくさん聞いてしまった。気付けばキンヂくんよりも41歳童貞さんの方がしゃべってる時間長くなってた。しかも僕が最近マイミクになった人の『セックス』という題名の日記を紹介したりしたもんだから、キンヂくんをたじたじさせてしまって大成功だった。僕も聞かれたくない事を聞かれたりして、終始たじたじトークライブだった。最後はファミコン音バージョンの『釈迦』をキンヂくんのエアギターとセッション。これに至ってはぐでぐですぎてやんない方がよかったくらいで最高だった。そんなところもレアすぎるぜ。キンヂくん付き合ってくれてありがと! 今度は普通に飲もうね(笑)。

 ピノリュックは正に「バンドやってたらナゴムみたいになっちゃった」バンドなんだと思う。ぼくらがP-MODELプラスチックスの悪いとこばっかり寄せ集めたバンドだとしたら、ピノリュックはいいとこばっかり集めたみたいな音楽をやる。証拠に彼らは彼らの音楽でみんなを楽しませていた。僕には出せないマジメさや真摯な姿勢が、実はドロッとした楽曲をさわやかに聞かせてくれる。あー、いつかちゃんとプロになるんだろうな。

 DJ童貞ジョニーの選曲の数々はやっぱり場の空気を作ってくれた。パソコンで音楽流してただけだけど、キモいMCも冴え渡っていた。そしてmixi筋肉少女帯コミュニティを荒らしている(と本人はもちろん思っていないんだろうけど)彼が本領発揮したのは打ち上げであった。この人と話していると、何度ぶん殴ってやろうかと思うことしばしば。チンコの先っぽにロープ結んで思いっ切り引きづり回して黙らしてやりたくなる。そんくらいウザイ。でも、僕はこの人がもし死んだりしたら大泣きすると思う。つまんない表現すると、「口は悪いけど実は優しい」みたいな男なんだ。僕に言われたくなんかないだろうけど、僕もそうだから書く。きっと何かのせいでズレまくってるだけなんだ。その何かってのはよく分かんないけど、僕達の手に負えないくらい巨大で、例えると真っ暗な地下室に暗く輝く小さな黒ビロードみたいなもんであることはたしかだとおもう。もしくはうさぎのうんち。
 そしてきっと、この日来てくれたお客さんも全員が全員何かのせいでズレまくってると思うんだけど、どうなんでしょうか。ごめんね、失礼ですよね。でも何人かだけど、届いたメールを読んでそう確信した。悩まなくていいことで悩んだり、いつの間にか自分は孤独だと思い込んでいたり、そのせいで実際本当に孤独になったり。僕も同じこと考えたことあるよ。いやむしろ今も毎日考えてる。

 石川さんの『オンリーユー』が終わって、僕たちバイナリキッドが演奏する番になった時のこと。良くないな。なんだか全てがどーでもよくなってしまった。今日のイベントのためにみんながいろいろ準備を手伝ってくれたことも忘れて、くそったれな気分になってしまった。なにが80年代だ。なにが青春だ。なにが童貞だ。なにが8ビットパンクだ。なにがグミチョコに音楽使われただ。大切なものはそんなもんなのか。アホかと。
 ライブの前の日の深夜に、ある人から電話がかかってきていた。僕の一番大好きな人。でもちょっと遠くにいてなかなか会えない。
「工藤くん、ベースあげる。もらって」
 どうしてなんだろうって思ったら、
「もう最近、自殺衝動が強くて」
 と言う。死んだら、僕に何も残せないから、一緒にバンドやってた頃使ってたベースくれるって。約束したはずなのに、くれるって。僕と君は、あいつが死んでしまった時に、自殺なんか絶対しないって誓ったのに。
「ベース、もし貰ったら、すごく大切にする。でも、貰いたくないからさ」
 僕は必死になって頼んだ。死なんでよ。頼むから。病院でもなんでも行くんだ。たしかに君にとってのこんな世の中、こんな人生、死んだ方がましだ。実を言うと僕もそういうこと考える時がある。実際そうだと思う。そして死にたいやつは、悪いけど死んだ方が幸せだと僕は思ってる。でも僕は悪いけど幸せ絶好調な毎日だからさ。そんな僕がまったく言えない事なんだけど、君はもうボロボロで、体も心もメチャクチャだ。だから先に言っとく。自殺する時、君は僕の事を思い出す事にする。もう伝えたから、絶対に思い出すよ。そして、やっぱやめとこうって思い止まる。そうなる。絶対に。うん。そうだね。そうだよ。じゃ、うん、またね。


 あの頃、チョコ編までしか出てなくってさ、でも夢中で読んだよね。僕らにとっての山口美甘子の事好きになったりもした。でも美甘子ではオナニー絶対にせぬぞと誓ってたよね。でもしるこドリンク普通に飲んでたよね。そしてあの本、映画になったんだよ。しかも君と一緒に作った曲が流れるんだ。10分かそこらで作ったあんなバカみたいな曲が、流れるんだから。君と一緒に観たい。ミシガンなんか自分も演奏してるくせにまだ観てないんだよ。なんかさ、みんなで観れたらすごく良くない?


 いつの間にか僕たちが用意した曲は全て演奏され終っていて、僕は神さまの演奏するでたらめな曲に頭をぐらぐらさせられていた。あまりのかっこよさと無鉄砲さに笑えてきた。
 パパママシャブ中! パパママシャブ中! ザーメン!
 ワケわかんねー! もう、このままずっとずっと聴いていたかった。なんだか悲しかったんだ。

 イベントが終わって、お客さんにもっとお礼を言いたかった。でもどうすべきなのか分からなかった。みんなとたくさん話していたいような、唾を吐きつけて欲しいような、なんだか何もなくて美しい場所でボーッとしたいような。

 ぐでぐでしている内に、出演してくれた方達と記念写真を撮ったりした。素敵な写真が撮れた。また今度みんなに見せるね。カメラマンの歪さんがすげぇデカイ、アイドルファンや鉄道オタクが持ってるような500万くらいしそうなカメラで撮ってくれた。カメラの画面ですぐに見せてくれたんだけど、本当にすごくいい写真だと思った。今の僕にとって昨夜のことなんてもう昔の事で、すでにもう終わった事だからきっと忘れてもいいし、いつか忘れたくなくても忘れてしまうんだろうけど、写真の中にはその時の「今」が確かに閉じ込められていたんだ。ちょっと、これには驚いた。


 写真を撮り終って、石川さんが帰るとき、ありがとうって言ってくれた。
「世の中さ、くっだらない事でいっぱいにしていこうぜぇ。まじめなことなんてたくさんあるんだからさぁ」
 そう言ってくれた。とてもうれしくなって、僕はその時、笑っていた。僕には何ができるんだろう、と思いながら。

 悲しかったんだと思います。ステキすぎて。何もかもが。すっごくまぶしかったんだと思う。こんな気持ちうまく書けないし、うまく言うこともできない。だから僕はバンドやってるんだと思うんだ。一度だけでもいいから、まだ会ったことのないたくさんの人にも僕たちのライブを観てもらいたいと思う。そしたらこんなの読んでもらうよりずっと分かってもらえると思う。