帰省8日目

東京に戻ろう。
大分発6:48の電車に乗ろう。明日の朝には東京だ。
と思ったらヒロポもおばあちゃんも寝坊してしまった。起きたら7時。うひゃあ。


一時間のロスなら特急使ってなんとか夜の大垣発ムーンライトながらに間に合うだろう。ともかく出発だ。
しかし、何かがヒロポを引き留めるのか、大分では滅多にない事故で電車が動かない!電線切れた!何が引き留めるのか?ヒロポは何かやりのこしたことないか?


予定より3時間遅れで宇佐に着いた。復旧作業は終わり、ダイヤは変速的だが、やっと大分県からでる事が出来そうだ。宇佐といえば、サイボーグ化されたおばあちゃんの入院している病院が近い。ピリリリリリ。発車間際、ヒロポは発作的に電車を降りた。もう一度くらいおばあちゃんに顔見せなきゃね。


近いと言ってもここは物凄い田舎。ナメンじゃねぇぞ。自動販売機だってないんだ(嘘)感覚が違う。一体病院まで何キロあるんだろうか。駅前のタクシーは出払っている。といっても、財布には606円しかないので乗れない。レンタカー屋で自転車を借りようと思ったが、そんなもんなかった。しかし、おっさんがかなり親切で、事情を話したら自分の車を貸してやると言い出した。いえ。事故でもしたら申し訳ないので。
「保険に入っちょるけん大丈夫じゃ。」
断るのに苦労したよ。


結局、歩いた。荷物が重い。長旅の道連れに本を6冊も持って来たバカは、田舎に置いていたいかりや長介の『ぶらりアフリカ』も持って来たのだ。


30分かけて病院についた。歩けなくないが疲れた。でも、おばあちゃんが喜んでくれた。マッサージしてあげてなかったもんな。モミモミ。
おばあちゃんは、男性看護士がやさしいのだと言っていた。でも女性の方が時にはいいらしい。オムツ替えられたりするのに、
「ヤッパリ男と女やけんなぁ。」
とのこと。ヒロポも介護実習でお年寄りを入浴させていたら言われたものなぁ。ヒロポだったら何見ても見られても気にしないけどさ。
「お昼食べたんかえ?」
食べてなかったけど、食べたと嘘をついた。600円しか持っていないとわかったら心配するだろうと思ったからだ。ティッシュを買いに行ってあげた。
そんなこんなで、病院を後にした。階段まで、歩行補助機を使ってお見送りしてくれた。
今度は耳かき持ってくるよ。あと、うどん打って送ってあげたい。


福岡県と山口県の間には、関門海峡がある。
小倉に着いた時には、すでに明日の朝東京に着くことは不可能になっていた。ここは都会なので金をおろせた。農協しかない田舎とは便利さがちがうぜ。わざわざ汚い店探してラーメン食べた。汁まで飲んだ。昔のパチンコもした。自分でビヨーンって打つやつ。店主がルールを教えてくれた。前からやってみたかったんだよね。ビヨーンビヨーン。店内はひと癖もふた癖もありそうな客がチラホラいるばかりだ。みんなビヨーンビヨーンしている。あっというまに200円分がなくなった。


夜行電車、ムーンライト山陽の指定席を手に入れたので、それに乗るべく海の反対側の下関まで行く。
ネットカフェでも行って時間を潰すかと思ったら、この街もなんにもないでやんの。
ストリートミュージシャンダイエーの前で歌っていた。暇なので話しかけて、セッションしようと誘った。
シキくんは最初どうでも良いうたばかり歌っていたが、オリジナルをやってくれとねだってやってもらった。ヒロポはピアニカの「にわたくん」を連れてきていたので、パプパプ吹いてシキくんの邪魔をした。するとすぐに、彼が才能ある人だと分かった。ヒロポも自分の曲『センス・オブ・ワンダー』と『君は夢』を披露し、即興で「下関の街をU.F.Oがメチャクチャにする」歌を叫んだ。当然、誰も見向きしなかった。警察に捕まらなくてよかったよ。
シキくんはあやしい男、ヒロポを受け入れてくれてゲーセンに連れていってくれた。一緒にファミコンアイスクライマーをした。ヒロポはコツをつかんだので、下関のゲーセンに名前を入れることができた。自分の名前でなく、好きな人の名前を入れた。まったく迷惑な話である。
シキくん、また、会おうぜ。ヒロポのバンドはスゲェぞ。世話になったな。



電車は夜の闇を突き進む一本の光だ。ヒロポはそれに乗っている。乗らされてるんじゃねぇ!レールを踏み外すことなく、全速力で突っ走るんだ!電車に乗ってくる人、降りる人、眠る人、善人も悪人もない。ただ、我々は電車に乗ってレールの上を突っ走り続けている。
そして、ヒロポもいつかは降りる。そこには別の世界であると同時に同じ世界があるのだ。